スクワットは長寿に繋がるのか

誰かがこんなことを言っていたのだが、テーマとして面白いのでウエイトリフティングとは関係ないけれどもちょっと考察をしてみようと思う。

先ずこれらを論ずるためにはそれぞれスクワット、長寿の定義や設定ををしなければならない。
この時点ですでに無理な気がするのでどうすれば定義づけられるのかなどを考えて行こうと思う。

まずスクワットだが、一般的なトレーニング種目としてのスクワットとして考えた場合、下半身主に脚力の強化を目的としたものとしよう。
動作としては足・膝・股関節の伸展屈曲を行うことによりそれらに関連する筋肉を動かすというものとするのが妥当だろうか。
さてここから腹筋も鍛えられるとか体幹も鍛えられるとか背筋系が鍛えられるとか言うが、ここに関して目的や動作を追加してしまうと検証が難しくなるので(下半身の筋肉を鍛えることで長寿になるのか、 それとも上半身が鍛えられるか長寿になるのか、全身運動で心肺機能が強化されるから長寿になるのかなどの長寿の要因が絞れない)この時点でスクワットは長寿に繋がるかという話を論じるのが難しくなる。
また今度はrepやsetなども含めると検証が複雑になる。
動作が複雑になるとスクワット以外の似たような動作でも長寿になるからスクワットじゃなくても長寿になるのではないか、等という話も出てきてしまうのでこの時点で「スクワットが長寿になる」という話自体が破たんしているように思えるがいかがだろうか。
それでも細かく設定していけが検証できなくはない問題ではある。

では次に長寿についての前提である。
これも非常に厄介である。
日本の長寿の多くは医療技術の発展による延命処置によるものも多いと言う。
更に国のデータの一部は年金受給の目的ですでに死亡しているにも関わらず生きているように装われたことによる、生命活動としての寿命とは違う形での寿命のデータも入っている。

また長寿と言うからには死についても考えなければならないが、死因も様々だ。
老衰によるもの、病気によるもの、事故によるもの、事件によるもの、自殺によるもの、考えるだけでもこれだけある。
現在、健康寿命という言葉が出てきているが、健康寿命というのは必ずしも生命活動終了によるつまり死による寿命ではない。
健康でいられる寿命ということであるが、おそらく明確な定義はないのであろう。
良く考えると、年を取ればどこかしら不健康になる。
健康から外れる条件を考えなければならない。
女性の場合だと閉経による女性ホルモンの低下による体調の変化による不具合は不健康となるのか、中には不具合を起こさない人もいる。

そもそも健康とはなんなのか。
体の健康ばかり見ているが心の健康は健康に含めないのか。
心が不調で自殺をする人もいるだろう。
心の健康も健康寿命にするのならば自殺による死亡は防げるのかも知れないのか。
そもそも定義をするにしても考えなければならないことがたくさんありすぎる。

実はスクワットは長寿にはつながらないという反論を作ることは難しいことではない。
おそらく思った以上にシンプルである。

過去に他の人よりも長く生き延びた人(そもそも長生きが何歳ぐらいまでなのかの定義は必要なのでこういう風に表現する)の中でスクワットをしてない人の方が多いのでスクワットは長寿にはつながらない。

この手のデータは過去のものを見るしかない。
過去のデータと言うとどこまで遡れば良いのだろう、ヒト(ホモ・サピエンス・サピエンス)が存在した時代からぐらいだろうか。
過去を考える。
スクワットという言葉はいつ生まれたのだろう、その概念はいつ生まれたのだろう。
おそらくヒトの歴史から比べるとほんの僅かだと思われる。
ヒトと言う種族はスクワットという存在を知らない期間の方が長く、その期間の長生きした人の方が圧倒的に数字として大きい、そしてないものは出来ないのだからスクワットも当然していない、だからスクワットが長寿の要因にはなりえない。

ここまで読んでなんかモヤモヤするかも知れないが、要は簡単に関連付けることは出来ないということでもある。
そしてもしも「スクワットと長寿」を考えるのであればここに挙げた以上に考えるべきことはたくさんあるということでもある。

先ほど健康寿命の話をちらっとしたが、スクワットによる健康被害も考えなければならない。
例えばこれは臨床として良くある話だが、スクワットをして足首・膝・股関節を痛める例である。
例えば変形性股関節症のリスクの高い人がスクワットを行う場合、そのスクワットにより変形性関節症になるリスクが高いということである。
世の中にはこのような事例もたくさんある。
だからこそ医者はそのような人に「スクワットはやらないで」と指導するのである、この言葉はスクワットが長寿に必ずしも貢献はしないということを裏付けるヒントにはなっていないだろうか。
ちなみに、もしもこの人がスクワットをやらずに長生きしたら「スクワットをすることで長寿につながった」とは言えない反証となるのではないか。

決してスクワットを否定するものではなく、その言葉を出して長寿と結びつけるからにはそれなりに裏付けを考えなければならず、裏付けを考えるのはそれだけ大変であるということである。

このような発言をするのも、見かけるのも、もっともらしい人が言えばそう聞こえるかも知れないがそこは注意をすべき点である。


以上、終わり。

2020.01.20 新規

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