ウエイトリフティング:スタートの体勢でウエイトリフティング挙上までの80%ぐらいは決まる

[要約版]
エッセイ用に書いた原稿だが、技術的な話になりそうなのでこちらに掲載。

それだけファーストプルに入る前の体勢は大事。

ファーストプル、セカンドプルと分けてしまうので体勢の重要性が見失われがちである。

もしかしたらここは分けるべきではないのかもと、今まではなんとなく感性や感覚で捉えていたけれどもやっと言葉にできるかも知れない。

人間の体の動きは、全部が全部、脳からの指令で筋肉を動かして行うものだと思われるが、実はそうではない。

筋肉に指令が動かなくても体が動く時があり、結構な力を発生させることもできるし、その動きが脳からの指令よりも早く体を動かす始動力を生むことができる。

それは「張力」を使うことである。

筋肉全体の組織のもともと持っている特性を生かして、脳からの指令よりも早く動作に反映させることができるのはその物体が持つ性質を利用することである。

主に張力を生むことができるのは「腱」であるが、それ以外にも筋肉組織を包んでいる結合組織もあるだろうし、皮膚や場合によっては着用している衣類の張力を使うことも可能かもしれない。

筋肉自体にも多少の弾力はあるのだろうからもちろん筋肉の張力も使うことができるだろう。

その張力を作るために、スタート前の体勢を作るという考えである。

スタート直前の体勢は、プルに必要な張力エネルギーを最大限にためて、筋肉の収縮よりも先に張力の開放が先に行われ、その後に脳からの指令で筋収縮が起こるのではないだろうかと思われる。

つまりは脳からの指令で出力できる筋力+張力がバーベルを挙上するための力なのであると考えるのである。

この理屈で行くと、ファーストプル、セカンドプルという考え方が返って動作の障害になる可能性がある。

ファーストプルはスタートからセカンドプルの直線までの動作までを指し、セカンドプルはプルの動作そのものを指す。

でもこの考え方はスタートから挙上までの一連の動作を分断してしまう。

本当はスタートからプルまでは分断されることはなくそこまでが一つの動作であり、分断をしてはならないのだか、分断する概念が言葉になってまで存在するということはもしかしたらバーベルを上げる動きを誤解している可能性もあるのかも知れない。

ファーストプル+セカンドプル

ではなくて、あくまでこのように分けられていない一つの動作なのである、と言うことだろうか。

その考えに習っていくと、ウエイトリフティングのためのハイプルや台に乗せた状態からのクリーンやスナッチという練習はウエイトリフティングの動作習得には貢献していないのかも知れない。

私自身は台に乗せたクリーンやスナッチの練習に意味を見出せなく、ウエイトリフティングに慣れてからは積極的にはやっていないがその感覚は正しかったのかも知れない。

ウエイトリフティングの動作をしっかり覚えるにはスタートからキャッチ(肩キャッチや挙上)を丸ごと覚える必要があるということであろうか。

それが難しいからファーストプルとセカンドプルを分けるのだろうが、分けない方がウエイトリフティングの動作の本質に近いのかも知れない。

それがようやく腑に落ちてきたというか言葉にできるまでまとまったというか、それを指導できるレベルにまで昇華できた感じもある。

と言うのも実際にそのような形で動いてもらえた時に、案外すんなりやりたいことが出来たりするので。

でも難しいのは確かである。

ファーストプル、セカンドプルと分けないのだからキャッチまでの動きは止めてはならない、動きながら筋力コントロールをしなければならないからだろうか。

そして、最初の体勢をどう作るのかがこれまた難しそうというか、自分自身の感覚を頼りに張力を作らなければならないところが大変だとは思う。

大きな張力を生み出すためには、脚力よりは股関節や体幹の使い方や場合によっては筋力がついていなければならないので、最初のウエイトリフティングの動作の習得は非常に地味なものになる。

でも、最初の体勢で張力を生み出すことが出来れば、あとは張力の力の発揮をコントロールしつつそれを妨害しないようにそれに脳指令の筋力を付け加えていけば良い。

人が考えて動くよりも、物質が本来持つ性質を利用した方がスムーズに動いたりする。

それを頭でと言うよりは体で理解できれば他の競技にも生かせるのではないかと思うがどうだろうか。

また、最初のそれほど重くない重量の方がその感覚はつかみやすく、動作としての習得はやりやすいと思う。

そう考えると、軽重量や中重量での練習もものすごく大事と言うことでもある。

初心者は軽重量でフォームをこなすための体の使い方をしっかり学んだ方が良いということだろうか。

急がば回れとはよく言ったものである。

以上。

2025.3.29 新規

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