クイックリフト:ある程度重たい重量を扱えるようになると思わぬ怪我をすることもある
一般的に正しくトレーニングを行うと、身体は強化され怪我のリスクが下がると思われる。
しかしそれは「身体へのリスク低下」と言う目的で組まれたトレーニングを行った場合であり、例えばパフォーマンスアップを目指す目的の場合はその限りではない。
結局トレーニングの原則の一つ「トレーニングはトレーニングしたようにしか鍛えられない」と言うところに帰結するということである。
クイックリフトで鍛えた身体はクイックリフトでは怪我のリスクは軽減するが、その成果を自身が行っている他の競技(クイックリフトの場合はウエイトリフティングは除く)へ生かそうとした時に、今まで起こりえなかった怪我をすることは良くあることである。
しかしそれは自身が行っている競技のレベルが落ちたからではなく、競技で行う動作においての筋力パランスが崩れたことにより起こっているということである。
今までは、小さい筋力だからこそ耐えていた体の弱い部位が、クイックリフトで強化され大きな筋力になったことによりその部位の強度がその力に耐えられなくなり怪我をしてしまうというケースである。
それを防ぐためには、同時にその力に耐えられるようにバランスを考えてクイックリフトトレーニングで扱う重量を決めていかなければならなかったり、競技の練習もしっかりやりこんだり場合によっては競技に寄っているトレーニングも同時に行わなければならないということである。
逆の言い方をすれば、その辺りをちゃんとやらずにクイックリフトをやっているにも関わらず怪我をしないのは、本当にクイックリフトトレーニングを効果的に行えているかどうかを疑う必要もあるということでもある。
今までやっていないイレギュラーなことをやるのだから、それに対するトラブルが出てくる方がある意味正解である、という考え方も一理あると思われる。
一つの例ではあるが、クイックリフトで脚力が強化されたことにより今までの競技での体のフォームを見直すことになったということがある。
それは何故かというと、クイックリフトで脚力が強化されたことにより関節が痛くなるようになったからである。
クイックリフト自体は痛みもなく行えるが、それ以外の競技や動作で痛みが出てしまうという現象である。
その理由を探ると、足の使い方に問題があり、具体的に言えば股関節・膝・足関節の配置がよろしくなく、もう少しだけわかりやすく言えば「Knee in」をしてしまっていたところによるようだ。
格闘技系のフットワークでの足の使い方の話なのだが、片足を前に出した時に、強化される前はその力とKnee inした膝の強度との拮抗が取れていたのか痛みにはならなかったが、クイックリフトのおかげで力強さが非常に向上したため、その拮抗のバランスが崩れて膝への負荷も大きくなり痛みになっていったという例である。
現在のこの時代は、各競技においてのフォームや体の各配置で怪我のリスクや動作の効率を論理的に見ずに、過去の経験則や感覚や感性で行っているものも数多くある。
また時代の流行やSNSでの情報配信により、トレーニングの知識だけが先行して、本当はもっと全体的に見ていかなければならないという点が欠如してしまい、結果「クイックリフトは危ない」「やっても効果ない」などと言う結論になり上手く取り入れられないケースも目に見えないだけで多々あるのだと思われる。
他の筋力トレーニングなどもおそらくは同様なのだとは思うが、クイックリフトトレーニングを取り入れるためには自身が行っている競技への科学的・論理的にしっかりと把握しておくこと、そしてクイックリフトトレーニングも同様にしっかり理解した上で、それではクイックリフトのどの部分を競技に取り込めるのかを考える力が必要になってくる。
今の時代、頭だけで考えがちだが、頭だけではなく自分の体でもそれらの理解は必要になって来るのかと思う。
頭ではわからないけど、体を動かしてみたら絶対にクイックリフトは良い効果がある、と思ったら体で科学的・論理的に理解をすることも同じように必要かと思われる。
要は理解もせずに取り入れれば怪我も起こりうるし、理解しないで取り入れるぐらいならやらない方が良いということもある。
クイックリフトトレーニングは比較的他競技へのパフォーマンスアップのために取り入れることが多いと思われるため、その辺りを注意できれば良いのではと。
確かに詳しい人に、専門家に教わるのが良いとは言うが、どの世界でも専門家や詳しい人が必ずしも正しく習得させてくれるとも限らない、そういう人たちにアドバイスをもらいながら、自身で試行錯誤していくのも良いのかと思う。
ただその場合は怪我のリスクは当然上がるが、試行錯誤して自分でやって身に付けたものは安易に専門家とやらに教わったものよりも理解度も完成度も格段に違うもので(その代わり時間はかかる)、興味があるようなら自分の力でやってみるのもありだとは思う。
後は、専門家がやっているという名目で配信されている情報(文字・画像・動画など)が正しく表現されているかは時々それを疑うところもあるのだが、それは知らない人から見たら見分けがつかないので、いろんな情報を見たり、実際にやってみたりすることも大事なのではと思うところではある。
実際にそういう人たちの情報を参考に行い怪我をすることがあったり、全く効果を感じないところもあるだろうし。
情報は受け取り手の解釈の解像度も大事になって来るので、実際に対面で指導を受けた方が良いこともある。
取りあえず、クイックリフトトレーニングを取り入れた後に、自身の競技で体を痛めてしまったら、クイックリフトを疑うのも一つの解決へのヒントになることは間違いないと思う。
以上。
2025.6.17 新規
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