ウエイトリフティングとスクワットの関係性

ウエイトリフティングとスクワットの関係性については誤解をしているケースもかなり多い。

ウエイトリフティングで必要なものは「脚力」であり「スクワット」ではないという事はしっかり認識しておかなけばならない。

スクワットというトレーニングはとても幅広い種目であり、スクワットと一口に言ってもいろんな行い方がある。
ウエイトリフティングと共有する部分と言えば「脚力の強化が出来る」という点である。
しかしこれも脚力というもの自体が幅広い概念であるため、それではスクワットで鍛えらえる脚力とウエイトリフティングで鍛えられる脚力は同じものであるかと言われるとそうとも言えない。
そう考えることが出来るのであれば、どのようなスクワットをすればウエイトリフティングに有効なのかというものも見えてくるものである。

もっと根本的なことを考えてみる。
スクワットで高重量を扱えるほどの脚力を持っている人は世の中にたくさんいる。
当然ウエイトリフティングと一見共通している脚力を有することが出来るスクワットであるのならばそのスクワットでの脚力が大きければウエイトリフティングでもそれなりの強さはあると考えるであろう。
しかしこの理論は簡単に打ち破られる。
スクワットで強い人がウエイトリフティングのやり方を知らなければあるいは出来なければ、そのスキルを持っていなければウエイトリフティング自体が成立しないので強い弱いという部分にすら立てないのである。

逆はどうだろうか。
ウエイトリフティングが強ければスクワットも強いのか。
ウエイトリフティングが強くてもスクワットのやり方を知らばければ(以下同文)スクワット自体が成立しないので(以下同文)。

スクワットというものが、あるいはウエイトリフティングというものがどういうものなのかの前提・定義がないとこの辺りは語れない。
しかしスクワットというトレーニング種目に関しては足首・膝・股関節の伸展・屈曲動作を行う動作であるという前提・定義を立てれば、ウエイトリフティングが強ければスクワットも強いのかという問題に関して、 ウエイトリフティングが出来てスクワットが出来ないという状況はない。
ウエイトリフティングの動作がスクワットの動作の一部を含むというのはウエイトリフティングのルールブックに触れられているので、この場合はウエイトリフティングが出来る人がスクワットが出来ないという状況はないという事である。

ウエイトリフティングとスクワットの関係性がなんとなく見えて来たであろうか。
では何故ウエイトリフティングを強くするためにスクワットをやらなければならないのか、果たしてそれは正しいのであろうか。

トレーニング3原理である「過負荷の原理」「可逆性の原理」「特異性の原理」この3つから考えてみると良い。

「過負荷の原理」
筋肉にかける負荷は過去にかかった負荷よりも大きくなければ筋肉は成長しないというような原理である。
ウエイトリフティングの動作においてもこれは当然のことであり、そのままである。
それではスクワットをこの原理の通りに行った場合、筋肉は成長するのであろうか。
共通する「脚力」に焦点を当てればその通りであろう。

「可逆性の原理」
トレーニングを止めてしまえばそのトレーニング効果はなくなってしまうというような原理である。
これはどちらにも当てはまる内容だと思われる。

「特異性の原理」
トレーニング内容に応じた効果しか得られないという原理である。
つまり脚力を鍛えたいのにベンチプレスをやっても脚力への効果は得られないという事である。
ここまで極端であれば解りやすいが、これがそれではウエイトリフティングの能力を高めたいのにスクワットをやってその効果が得られるのかというところである。

分かりやすく言うと、ウエイトリフティングとスクワットと共通するものがあればその部分に関しては効果を得られるが、共通しないところは効果はないという事である。
先ほどウエイトリフティングの動作の中にスクワットの動作の一部が含まれると書いたので、ウエイトリフティングに関してはその恩恵はあり得るという事。
ではスクワットはというとスクワットの中の動作にウエイトリフティングの動作がどれぐらい含まれているかと考えると、ウエイトリフティングの動作からのスクワット効果と比べると割合的にはどうなのか。

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さて、ウエイトリフティングに必要なものの一つは「脚力」であると書いた。
では「脚力」というものはスクワットでしか鍛えられないのであろうか、ウエイトリフティングで使う脚力は「スクワットだけで十分」か。
これはウエイトリフティングにおいての脚力というものを捉えておかなければならないところであるが、単純な話「脚力を鍛えるトレーニングであれば何でも良いしスクワットでなくても構わない」である。
なのでウエイトリフティングで使える脚力であればレッグエクステンションでも良いし、ランジ系でも構わない、脚力に使われる筋肉を強化出来るものであれば何でも良いのである。
スクワットはたまたまそれらを鍛えらえる種目である、というだけの事である。
だったらウエイトリフティングの種目でも脚力を鍛えられるのではないかと思われるがその通りである。
最も、特異性の原理を考えるのであればウエイトリフティングの種目で脚力を鍛えるのが一番の正解であるような気はするのであるが。

ウエイトリフティングで言う「脚力」とはいったい何なのであろうか。
ウエイトリフティングから派生した筋力トレーニングである「クイックリフト」という種目は「瞬発力を鍛えるトレーニング」とも言われている。
この瞬発力を使うのはウエイトリフティングの特徴の一つであり、これがあるからクイックリフトという種目が生まれた。
ウエイトリフティングの脚力は当然「一定速度での筋収縮における筋力出力」も含まれる部分があるが、要は「加速あるいは瞬間的な筋収縮における筋力出力」であるという点は外せないであろう。

ここでスクワットという種目と、特異性の原理を思い出してほしい。

・スクワットという種目は一般的には「一定の速度での筋収縮における筋出力」により行う動作
・特異性とはトレーニングに応じた効果しか得られない

である。
つまり、特異性を考えるとスクワットという種目ではウエイトリフティングの特徴である「加速あるいは瞬間的な筋収縮における筋力出力」のトレーニング効果は得られないという事である。
これはトレーニング3原則から見たスクワットとウエイトリフティングの関係性を示すものではないのであろうか。
つまりウエイトリフティングに必要な肝心な部分はスクワットでは鍛えられないという事であり、ウエイトリフティングとスクワットとはそういう関係性であるという事である。
もちろんこの部分を考慮してスクワットを工夫すればスクワットとウエイトリフティングの関係性も変わってくるが、別の問題も発生してくるのは今回は伏せておく。

理論的に考えればそうである。
しかし現実問題として、ウエイトリフティングをやっている人がスクワットトレーニングを積極的に取り入れているにはそれなりの理由がある。
実際にスクワットが強くなればウエイトリフティングも強くなるという事実は目を背ける問題ではない現実である。
またスクワットが強いのにウエイトリフティングがそれほど強くないという事実も存在する現実である。
それは何故なのかは理論的に考えれば当然のことであるのも今回の考察を読めばお分かりいただけると思う。
以上、何らかの参考にしていただけたらと思う。

終わり。

2020.01.19 新規

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