ウエイトリフティング:床引きとブロックトレーニングの比較

どこかで話した気もしなくはないが、ちょっとだけじっくり考えてみたので考察レベルという前提で話をしていこうと思う。

例えば床引きクリーン・スナッチとブロック(ある程度高さのある台の上にバーベルを乗せた状態で行う)のそれとでは、同じクリーンなのにブロックの方が重量を扱える気がするのはなんでだろ~(テツ&トモ風味)という話について。

何故比較しようと言うことになるかと言うと、バーベルの置いてある場所が違うけれども同じクリーンやスナッチだから、何故高い位置から挙げると重量を扱えるのだろうという疑問があったからだと思われ。

理論的に考察してみたところ、不思議なことがいっぱいあったので、メモがてらに書き捨てをしていこうと思う。

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取りあえず目視できるようにグラフのような図を描いてみた。



床引きのイメージ図が左の曲線で、ブロックのイメージ図が右の曲線。

床引き(以下:床)の実際の曲線はab
ブロック(以下:ブ)の実際の曲線はa'b
床ab-ブa'b=aa'

と表現している。

理想のブ曲線は「床ab-aa'」をイメージしていると思う。

床a'bとブa'bは別曲線ではあるが、x座標の位置は同じ(見た目の便宜上スライドして並べてるだけ)

曲線がクリーンなのかスナッチなのかは問わない。何故ならどちらも大体同じようなこんな軌道を描くから。

まあ、ざっとこんなものか。

でもここからいろいろ考えていくと、いろいろな考察が出てくる。

1.見た目上は同じ曲線だが、床a'bとブa'bは同じ曲線なのか

ここには描かれていない条件を考えてみよう。
  1. 同じ人物が描いた軌道か
  2. 動力(人物)の機構・能力が同じか
  3. 線を描く点(バーベル)のエネルギーに差はないか
1は2とも言えるかも知れないが、1が同じではなくても2は成り立つ場合もあるのであえて分けて書いた。

この曲線を描くための条件として、まず人物とバーベルが必要で、それを動かす必要がある。
それらがあって初めて曲線は描かれるのでこれらも見えない要素である。

そして基本的に人物は動力であり、曲線を描く点はバーベルである。

人物は動力源なのでエネルギーを生み出す力があり、その力を帯びるのがバーベルであり、バーベルには物理的な法則が働く。
例えばバーベルは動力と重量両方に動かされる等。

あまり細かく見ていくとキリがないので適当なところで止めておくが、最低でもこれらがこの曲線を描くために影響をしていると考え良いと思う。

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2の「動力(人物)の機構・能力」について
  • 骨格全体の形が同じか(つまり同じフォームかどうか)
  • 曲線に対しての動力の位置が同じか(人物とバーベルの距離)
  • 脳からのシグナルのタイミングやスピードは同じか
  • 関係する筋の状態(張力や収縮、エネルギー源)が同じか
  • 速度が同じか
まあこんなものなのではなかろうかと(抜けがある可能性はある)

例えばの話だが、筋の状態については、同じとは言えない可能性はある。

このバーベルを動かすための動力は筋肉であり、動力源は筋肉や血中にあるエネルギー源である糖やカルシウムが必要であるが、床引きとブロックではaa'の影響がどれほどあるのか、それを考察する必要がある。

また、筋の長さからの収縮についても考える必要があり、最初に設定されている筋の長さからいきなり収縮を開始するブロックと、すでに収縮をしている動的な収縮からさらに筋収縮をスタートさせる床引きの筋肉の機構は「差」と言えるのか言えないのかの定義をする必要もある。

この時点で筋の使われ方が違うのだが、この動かし方の差はそれこそ今論じている床引きとブロックでの特異性と共通するのかしないのかも考察しなければならないのではないか。

考えていくだけで嫌になってくる(個人的な意見)

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3.のバーベルのエネルギーについて

バーベルの動きが等速か加速かで、バーベルが持つ物理的なエネルギー量、ベクトル(大きさや向き)が違う可能性もある。
これは後程出てくるかも知れないが「曲線を描く時間」にも関係してくる。

例えば床引きとブロックの場合、a'の地点でのバーベルの状態は違うと推測される。
見た目としてはブロックの場合のa'は静止状態であるが、床引きのa'は等速ないし加速している状態である。
この差がエネルギーの差となる可能性もある。

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とまあ、この曲線を見ているだけでもいろんなことが思い浮かぶので、それらをすべて検証していかなくてはならない。

もう一度、図を見てみる。



今度はこの曲線が描かれた速度を考えてみる。

床a'bとブa'bは同じ速度で描かれていた場合はそれらは同じエネルギー量であると思われるので、扱える重量に差はないのではないかと思われる。

では床a'bがブa'bよりも重量を扱えなくなる要因は何だろうかと考えてみる。

床にはあってブロックにはないもの、それはaa'(を描く時間)である。

aa'が重量を扱えない原因なのだろうか。

そう考えるとaa'では何が起こっているのだろうか。

もしも動力にエネルギーのロスがなければ、aa'の時間の分だけ遅れはするが床a'bもブa'bと同じ重量を扱えてもおかしくはない話である。

しかし実際に重量を扱えなくなるということであれば、まず、動力に上限値または総量が存在するということになる。

つまりバーベルを動かすごとに動力の総量が減っていくということになり、また動力の量が挙げられる重量を左右するということになるのだろうか。

そう仮説を立てた場合、動力や動力から生み出されたエネルギーについて考慮しなければならず、それを動力エネルギーとした場合、バーベルを移動させたい距離を移動エネルギーとして、 動力エネルギーと移動エネルギーの量の相殺でバーベルは目的の場所に動いていくということになるのではないだろうか、と推測できる。

動力エネルギーは有限であると考えると、生み出せる動力エネルギーには限界があり、それが取り扱える重量に影響を与えるということなのだろうか。

閑話休題。

そう考えた場合、ブロックの方が重量を扱えるということについては説明は出来る。

床引きの場合、aa'の分動力エネルギーを消費してしまうため、その消費が生じないブロックの方が重量を扱えるのは当然の結論である。

しかしここで疑問が生じる。

動力のエネルギーの生み出し方は?

いろいろ省くが、例えばジャンプする時にaa'のようなロスとなる曲線を描いて飛んだ方が高く飛べるという例がある。

ボールを投げる時もaa'分が重要な例もたくさん存在する。

aa'は必ずしも動力エネルギー消費させるものではなく生み出すためのバフとならないだろうか?

さて考えるのがそろそろ面倒になってきた(個人的な意見)

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違う視点から考えてみる。

もしも床abとブa'bが同じ時間で描き終わった場合。

ここでもしも床とブロックと同じバーベルの重量だった場合に、床a'bとブa'bを比較してみよう。

当然だが、床a'bの方が移動時間は短い。

となると、理論上はエネルギーの大きさは「床a'b>ブa'b」になる。

となると、同じ重量で速度だけ変えれば、床引きの方が大きな力を出せる場合もある、とは言えないだろうか。

ウエイトリフティング界では「ブロックの方が大きな重量を扱えるつまり大きな力を出せる気がする」とは言うものの、この場合だったら「床引きの方が大きな力を出せる」ぐらいは言えるので、 ブロックの方が大きな力を出せる気がする、という部分に関しては必ずしもそうではない可能性がある、と言えないだろうか。

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正直なところ「良く分からない」かも知れない、と言ったところでしょうか。

人間が行う動作についてはいろんな条件や要素がたくさんあり、それらを洗い出すのも大変だし、おそらくまた検査器具的な技術的に証明できないこともあるのではないかと思います。

その中で、今出来る時点での考察は非常に大事だと思うし、そこを裏付けるのは今のところ経験則や統計なのかなという気がします。

ブロックのトレーニングについては、効果がある人はやれば良いし、効果がない人はやらなくて良いのでは、というのが今のところの結論ですかね。

もっと頭の良い誰かが分かりやすく説明してくれないかな~(他力本願寺)

以上。

2023.8.21 新規

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