筋肉の収縮において「脳から指令を受けて筋肉に電気が流れて収縮する」という説は解剖学や生理学を調べると出てくる話である。
しかし筋肉は電気が流れていなくても「収縮している」という形を取っていることがある。
例えば肘関節を屈曲すると上腕二頭筋が収縮する。
この形は自分で力を入れて行う場合と、もう一つ、上肢の力を抜いた(自分で力を入れない)状態で他人に曲げてもらう場合がある。
前者は脳から指令を出して最終的に筋肉に電気が流れて収縮する通常の反応だが、それでは後者はどういう現象が起こっているのだろうか。
後者は脳から筋肉に電気を流す指令を出していないので筋肉が収縮していない状態である。
しかし筋肉が収縮していないにも関わらず、肘関節は屈曲する。
この違和感を覚える人はどれだけいるのだろうか。
スポーツ関連や整体系の関連での機能解剖学でざっと学んでいるならば、おそらくこう説明があるであろう。
「筋肉を収縮させることで蝶番関節(や短関節等)は屈曲または伸展する」
こういう学習内容であると関節は「筋肉が収縮しないと関節は屈曲しない」と思うだろう。
しかし、現実問題としては「筋肉が収縮していなくても関節は屈曲する」という現象が起こるのである。
一つの可能性と考える。
「電気を流さなくても筋肉は収縮することができるのではないか」と。
この問題は、今の学問の範囲では「否」である。
原則、筋肉は電気が流された時にしか収縮しない。
それでは他の可能性を考えるしかあるまい。
「関節が屈曲する時、筋肉は収縮以外の形を取っているのではないだろうか」と。
今回このことについて筋肉の専門家に話を伺うことが出来た。
ことはSPORTEC2024(スポルテック2024)。
筋肉の研究をしている本格的な専門家がとある企業ブースに来るということを知ったので、フィットネス界隈の情報収集と言うことで上記疑問をその人に聞いてみようと出向いた。
その人とは、バズーカ岡田こと岡田隆教授。
一度本物を見て見たかったのもあるが、話をするチャンスがあるかも知れないのなら行くしかあるまいと突撃したら、なんと話をすることが出来たのである(驚き)。
と言うことで、今回の話について、岡田教授本人からの掲載許可※も頂いたので、今回はその内容を基に、基本的には私の言葉(表現)で話していきたいと思う。
まずは岡田教授、お話いただき、そしてそれらを記事にするのに承認していただきありがとうございました。
※岡田教授による文章チェックは通してはいませんが、掲載許可は得ています。
では話の続き。
「関節が屈曲する時、筋肉は収縮以外の形を取っているのではないだろうか」と。
私の中ではある程度推測が出来ており、おそらくは「筋肉が撓んでいる」である。
ただ、私がアクセスできるいろんな資料を出来るだけ探して漁ってみたがその答えは見つからなかった。
しかし、今回岡田教授からその回答を聞くことが出来た。
結論から言うと推測通りの「筋肉が撓んでいる」であった。
岡田教授はとても丁寧に話をしてくださったのでその内容を掻い摘んでみると、例えば肘関節を曲げたり伸ばしたりしていない時の筋肉はスラック状態であるとのこと。
筋肉に電気が流れればいつでも収縮できるように、ストレッチで伸ばされれば元の筋長よりも更に長くなるようになっているのもスラック状態であるからこそであるという事。
それではスラック状態のままの筋肉の両端を近づけると、つまり関節を屈曲するとどうなるのかと言うと、そこに電気が流れての筋収縮は起こらずに撓む(曲がる)のである。
一つ目の結論は
「筋肉は電気が流れた時のみ収縮をしている」
「スラック状態の筋肉を筋長よりも短い空間に収める(他人によって関節を屈曲させられる時)場合は、筋肉は収縮していない」
「収縮していない筋肉が筋長よりも短い空間に収まる(他人によって関節を屈曲させられる時)場合は、筋肉は撓んでいる(曲がっている)」
と言ったところであろうか。
【参考図(想像図)】
さて、筋肉が撓むのは良いのだが、そのためにはその余白が必要である。
これも今回の話では非常に重要な事である。
この話については「
筋肉が収縮するという事その2」で、続きとして話していきたいと思う。
以上。
2024.7.18 新規