ウエイトリフティングにおけるデッドリフトの考え方
★ポイント:デッドリフトで鍛えたい場所を鍛えるのはもちろんだが、それ以外にも「背中で持つ」ことを覚えるという目的がある
ウエイトリフティングにとって、デッドリフトは絶対にやりたいトレーニングです。 ただ、気を付けたいのは、きちんとウエイトリフティングにあった形で行うことでしょうか。
ウエイトリフティングのデッドリフトは、ファーストプルの動作がそのまま当てはまります。 ですので、できればウエイトリフティングの形ではないデッドリフトは避けたいところです。
なお、この先のセカンドプルについてはウエイトリフティングにおけるボックスを使った練習法で書いていますので、あわせて読んでいただければと思います。
パワーリフティングのデッドリフトとは別物
それでは、もう少しデッドリフトを細かく見ていくとします。
例えば、パワーリフティングなどで見られる、相撲スタイルデッドリフトですが、これはウエイトリフティングの補助筋力トレーニングとしてはほぼ役に立ちません。 そもそもスタートの姿勢がファーストプルの構えとまったく違うからです。
また、パワーリフティングのテクニックを取り入れたデッドリフトもほぼ役に立ちません。 何故ならば、それらデッドリフトは、あくまでも「高重量を上げるための、パワーリフティング的テクニックを導入したもの」であるからです。 そもそも目的の競技が違うのです。
胸椎の後弯は絶対にNG
同じくパワーリフティングで見られる、胸椎を後弯させ、そのしなりを利用して挙げるデッドリフトもありますが、あれもウエイトリフティングでは役に立ちません。
基本的なデッドリフトにおいて、胸椎の後弯はNGとされていることも多いですが、パワーリフティングの場合、腰椎の前弯を強くしない、または後弯させない、ニュートラルな状態を保つのが条件だったりします。
そもそも、筋トレでもパワーリフティングでも、デッドリフトは最後まで、比較的等速で行います。 途中で加速したり、動作が変わるということはありません。 だからこそ胸椎が後弯していても、それほど大きな怪我にはつながらないとされています(但し条件付き)
ウエイトリフティングでは、その後弯は絶対にNGです。 結論から言うと大怪我のリスクが非常に高くなります。
反動を使うとバーベルはどこへ行くか
また、体をまっすぐにするついでに、最後に後弯のしなりを利用してその反動を使おうとする、なんてことを考えることがあるかも知れませんが、それはフォームとして成り立ちません。
確かに全身を使い、バーベルを振り回すことが出来ます。 しかし、振り回したバーベルは、本来あまり持たせない方が良い方向への力のベクトルを持つことになります。 つまり、その方向へ進もうとするエネルギー、慣性の力を持ってしまうということです。
ただそれをどこかに放り投げるならそれでも良いのですが、ウエイトリフティングはそれを自分の体に乗せなければなりません。
地面と水平な方向に力を帯びたバーベルを受け止めるためには、そのバーベルの力のベクトルと逆向きの力のベクトルをかけなければなりません。 振り回されたバーベルの持つエネルギーは小さくありません。 それで大体が受け止めきれずに体の後方に落として失敗するか(スナッチによくある失敗です)、無理矢理止めようとして肩や腕を痛めます。
バーベルを体の上に乗せるためにはどの形が一番無理が少ないかを考えれば、バーベルを振り回すような動きに繋がるデッドリフトはご法度に近いでしょう。
では、どのようなデッドリフトが良いのか
脊柱は基本的に正常なS字カーブを描くようにします。 一般的に言う「まっすぐにする」です。 そして、その上体を保ったまま、バーベルを持ち、デッドリフトをするのです。
ウエイトリフティングのデッドリフトはもちろん脊柱起立筋などの体幹を維持するための筋力トレーニングでもあります。 しかし別の目的を言えば「肩甲骨で、背中でバーベルを持つ」ということを訓練するためでもあるのです。
何故「背中で持つ」のか
何故背中で持つのか、肩甲骨で持つのか。
通常、日常生活において、背中からおもりを手で持ちぶら下げる、という動作はあまりありません。 人はバーベルなど、手で持つものに関しては、腕で持とうとします。 腕で持とうとすると、前腕を固め、上腕も固まり、肘がロックされそして肩関節の動きがロックされがちです。
ウエイトリフティングでは、肩関節は柔軟に動く必要があります。 肘も比較的脱力が出来た、ロックがされていない状態を作れるようにならないと、良いパフォーマンスは生み出されません。
「胸を張る」には二種類ある
人は、例えば胸を張って、という動きで腕を使います。 これは何故かと言うと、胸を張る→上腕を体の後方へ引く、という動きをします。
実は胸を張るには違う方法もあり、それが胸を張る→胸郭を上げる&肩甲骨を内転・下制する、という形です。 ウエイトリフティングでは後者のスキルが必要です。
後者は胸を張るのに腕を使いません。 だからこそ、腕の力を程よく抜くことが出来るのです。 前者はどうしても腕を使いますので、肩関節の動きに制限が出ます。 肩関節の可動域が少なくなり、且つ肘も少し曲がってしまうので、ほどほどに腕に力が入ってしまうのです。 もちろんこの動きも動作としては必要になる時があります。
ただ、ウエイトリフティング的に必要なのは「胸郭を上げる&肩甲骨を内転・下制する」です。 ですので、ウエイトリフティングに役立つデッドリフトはこれを意識したものになります。
握らない、フックで持つ
また、バーベルはしっかり握りません。 指をフックのようにした状態で、サムレスが理想です(ただ、ジムによっては安全性の面から親指はしっかり反対側に置けと言われることがあります。その時は握らない、です)
その形でバーベルを持つと、案外背中が使いやすくなると、経験者は言います。 背中が使いやすくなると、肩甲骨が動かしやすくなったり、胸郭が動かしやすくなったりします。
初中級者は伸ばしきる
そして、ウエイトリフターがよくやっているデッドリフトで、体を完全に伸ばしきらない、というものがありますが、初中級者は最初はしっかりと身体を伸ばしきります。
何故かと言うと、自分が身体をまっすぐにした状態を忘れないためです。 また、高重量になればなるほど、体をまっすぐにする努力、方向性が必要になるからです。 一番は、股関節が完全伸展した状態での筋肉を鍛える、という目的があります。 伸ばし慣れていなければ怪我のリスクもあります。 それをしっかり補強するのです。
往路より、むしろ復路
そして往路もあれば復路もあります。
最後しっかり股関節も伸ばしきり、その後は上半身ですね。 胸郭を上げ、肩甲骨を精いっぱい内転・下制する、限界まで背中を動かす。 そこで往路は終わり、すぐに復路に入ります。
復路はそこで作った上半身(特に脊柱のS字カーブ)を崩さぬように、肩甲骨が重さに引っ張られて外転しないように、胸郭が下がらないように努力しながら、バーベルが落ちたい軌道に自分の体を合わせて、協調させながらゆっくりバーベルを下ろします。 最後は静かに置きましょう。
そこで手を離す人が大半ですが、ウエイトリフティングにおいて、その場所の筋力は一番大事です。 つまり構えからのファーストプルの、そのプルが上がらなければ試技は始まりません。 そこで力でコントロールせずに落としてしまうと、その大事な筋肉は鍛えられません。 だからこそ、本当はウエイトリフティングはすべてにおいてバーベルは落とさない方が良いのですが、あまり理解されていない点でもあります。
この点についてはウエイトリフティングの安全性にも書いていますので、そちらもあわせてどうぞ。
重量は「形が変わらない」ところまで
ここまで読んでいただければ想像がつくかと思いますが、この内容で何レップできるか、という話にはあまり意味がありません。
大事なのは、最後の一回まで、そして復路の最後まで、作った形を一切変えずにやりきれるかどうかです。 胸郭が落ちた、肩甲骨が引っ張られて外転した、脊柱のS字が崩れた。 そうなった時点で、その重量は今の自分には早いということになります。
回数を増やすことでも、重量を上げることでもなく、限界まで形を変えないこと。 これがウエイトリフティングのデッドリフトにおける重量設定の基準だと考えています。
最後に
ここまで文章で説明をしてきましたが、意識するところはたくさんあります。 意識しないで簡単にできる方法などありません。 簡単にやる人は、おそらく大半がそこに至るまでに練習を重ねた人たちです。
ウエイトリフティングでのデッドリフトは、下半身よりは上半身、体幹を鍛えることが大きな目的だと思います。 そこを意識して、体幹を上手く使えるようになれば、パフォーマンスも上がると思います。
是非、意識してみてください。
以上。
2026.9.5 新規
Kirita Production & Kirita Production Gym
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