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エラーもデータ――ウエイトリフティングのフォーム習得と失敗の考え方


タイトルは固くしてありますが、気楽に書くことにします。 内容としては「当ジムの指導方針」のような話にもなると思います。

正解を教えない運動指導

パーソナルトレーニングで、例えばクリーンのフォーム練習のときに、よくお客さんに言っているのが「エラーもデータだから必要」です。 むしろ、初心者にしか得られないエラーがある、それを持っておくことは大事なことだから、と言っています。

「エラーはすべて正しい」 これは違います。

エラーにはいくつか種類があります。

意図が合っていて結果が未熟なエラー

「そのエラーは間違っていない」とも言います。

初心者が出しても安心してよいエラーです。 人によってはエラー=間違い、失敗、ミスですので、一見論理破綻しているようにも思えますが、やろうとしたことをやって、未熟だから起こるエラーというものがあります。 これは正しい、技術と身体機能が足りていなかっただけ。 それがこのエラーです。

試み自体を修正すべきエラー

「やってはいけないエラー」に入ります。 これはやろうとしている方向性が、つまり動作手順や考え方などが間違っているのでダメなエラーです。

危険で再現すべきでないエラー

これも「やってはいけないエラー」ですね。 見た目が正しいから合っているだろう、キャッチできているから合っているだろう、ではないのです。 そのやり方は、自身の体や、周りの人間、道具やプラットフォームの損傷などのリスクを伴う場合があります。


ただ、これらのエラーはエラーデータとして持つべきものではあります。 エラーを分類して持つということです。

練習していてミスを、エラーを出した。 さて、このエラーはなぜ起きたのか、やろうとしていたことに対して出してよいエラーだったのだろうか。 そこで上記3つのどれに該当するかを、今行ったフォームをもとに検証するのです。

もしも間違っていないエラーなら、出ても問題はない。 やってはいけないエラーなら、自分の動作手順を見直すなどの検討が必要です。 危険なエラーなら、まずはそれを繰り返さないことです。 (危険の認識についてはウエイトリフティングの安全性にも書いています。)

私という指導者は客観視しかできない

正しいフォームを再現したときの感覚は、本人にしか分かりません。 これもよく言います。

「私は外から見た形での良い悪いしか判断できない、だからそれを言われたときの自分の中の感覚を確認してほしい」

内部の感覚は当人にしか分かりません。 しかも感覚は、言語化しても共通のライブラリがあるわけではありません(似ている言葉はありますが、人によって違う形で登録されていることもあるでしょう)。 結局、完璧なフォームを提示できたとしても、その人がその感覚を記憶し、再現できるかどうかは全くの別問題なのですね。

完璧な説明でできないのならば、その説明は完璧ではないと言われるかもしれませんね。 そこで私が伝えていることは「完璧なフォームのやり方」ではなく「あなたは今、これができていない」ということなのかもしれません。

再現された動きを客観的に見る。 その中でできていたもの、できていないものを見分けて、それをもとに、まずはそのことを伝えます。 指導されている側は、私の意見をご自身の内部の感覚と照らし合わせ、次のフォームに反映させる。 そのための情報を観測から得て伝えること、それが私にできることです。

ちなみに運動学習の分野でも、指導者によるフィードバックの与え方や、学習者自身がエラーを評価することについて研究が行われています。学習者が主体的にフィードバックを活用する方法には、運動学習に有利に働く可能性が示されています。ただし、その効果は練習内容や習熟度、フィードバックの方法によっても異なります。

フォーム練習の良し悪しは「成功」「失敗」の二分ではない

これは私の考え方ですが、成功も失敗もresult(結果)でしかありません。

そしてフォーム練習において、結果はこの2パターンしかないのかと言うと、そうではないと私は考えています。

これは表現の問題でもあります。 「成功」「失敗」の2進数で言い表すのか、「それならほぼ良い」「及第点」「方向性は合ってる」「頭での理解はしているけど体がついてきてない」「それはやってはならない」と言い表すのか、そんな問題ですね。

よく「今のは惜しい!」と言うことがあるじゃないですか。 それは「成功に近い失敗」と表現するのか「完璧ではないが成功」と表現するのか、表現の方法は様々です。

これがもし「失敗」ならば「次はこのやり方はやらないほうがよい」なんて思うこともあるかもしれませんが、成功ならば「方向性は合ってるから、より磨きをかけよう」なんて思うこともできるかもしれません。

もちろん、どう呼んでもよいわけではありません。 最初に挙げた3つのエラーのどれに当たるかで、かける言葉は変わります。

そこで考える、エラーの活用方法

エラーはフォームの正しい形を身につけるために活用できるのか。 そもそもウエイトリフティングでは、正しいフォームは一つではないと私は考えています。 ですので、私としてはエラーは

「その人が正解に近づけない理由を一緒に探すこと、今できていないことを一緒に見つけること」

のために使うものだと思っています。

ただ見よう見まねで模倣していれば、いつかはできるようになるのか。 そう聞かれると、素直に「Yes」とは言えません。 だからこそ、模倣を形にするために「何ができていないのか」を探すことが重要なのだと、私は思っています。

私の指導方針はそのような方向性を持っています。

もちろんこの指導方法が合わない人もいる

十分承知です。 納得がいかない、楽しくない、あると思います。 練習の手法にも相性がありますし、その人の現状のレベルにも左右されます。 だから、無理に私の方針に従う必要もないと思います。 そのような場合は、ぜひ他の指導者のところで学んでみてください。 比較対象があるからこそ、学べることもたくさんあります。

最終的に、どのように進めていくかは、当人が決める問題だと思っています。

楽しいウエイトリフティングライフをお送りください。


2026.10.10 著


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→ウエイトリフティングで上達するのにやっておいた方が良いこと:メモを取ろう

→ウエイトリフティングのフォーム習得のための初期基準

→ウエイトリフティングの安全性

→ウエイトリフティング指導

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