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ウエイトリフティングフォームを分割するとウエイトリフティングではなくなる 2025.4.15記


ウエイトリフティングの習得で非常に大事になってくるのは、「ウエイトリフティング」をいかにウエイトリフティングとして練習するかです。

おそらく今のセオリーでは、ウエイトリフティングの動きを分割しながら強化していくのだと思います。しかし、分割したものをくっつけても、元のウエイトリフティングにはなかなかなりません。

まったくならない訳ではないのですが、ウエイトリフティングの本質をなんとなくでも掴むことができたなら、今の分割方法は適していないと感じるのではないかと思います。

今のセオリーは4分割

現在では、ファーストプル、セカンドプル、サードインパクト/サードプル、キャッチという形で分けるのが一般的だと思われます。

確かにウエイトリフティングの動作を分けてみると、この区切り方は分かりやすいですし、別々に練習もしやすい。

それぞれ、こんな内容になっているかと思います。

  • ファーストプル … デッドリフトのようなトレーニング
  • セカンドプル … ブロックに乗せたところからの動作、あるいはハイプル
  • サードインパクト … 足首周りのトレーニング(この概念は私が現役の頃にはあまり知られていなかったので、詳しくは分かりません)
  • キャッチ … ローキャッチであればフロントスクワットやオーバーヘッドスクワットのようなトレーニング

しかし、ここまで分けてしまった時点で、それぞれはもうウエイトリフティングではありません。

では、ウエイトリフティングではないものを組み合わせたら、それはウエイトリフティングという動作になるのでしょうか。そう呼べるのでしょうか。

4つを足してもスナッチにはならない

例えば、バーベルをデッドリフトで大腿の真ん中あたりまで持ってきて、そこからハイプルをして、足首の底屈をして、オーバーヘッドスクワットの体勢になる。

これは果たして、スナッチなのでしょうか。

否、これはスナッチではありません。4つの動作を組み合わせた「ウエイトリフティングのように見える動き」に過ぎません。

なぜそう言えるかというと、ウエイトリフティングの本質的な動作を壊してしまう分割の仕方だからです。

スナッチとは、バーベルが床から離れ、キャッチして、立った状態でフィニッシュするまでの一連の動きを指します。それぞれの動きに連続性がなければならず、連続性があるからこそスナッチなのです。

連続しているものから連続性をなくしてしまったら、それはもうスナッチではありません。

ここまで読んで、訳の分からないことを言っていると思われるかも知れません。

しかしこれは、スナッチをマスターした後に、改めて分割してそれを成立させられるかどうかを試してみると分かるかも知れません。

「ここからここまでがファーストプルで、この時点でセカンドプルで、ここでサードインパクトで、そしてキャッチ。この4種目を自分はやっているんだ」——スナッチをやっている最中に、そんなことは考えないと思います。

考えずに境界線をなくしている時点で、そのスナッチはすでに4種の組み合わせではなく、1種のスナッチになっているということです。

変わるのは動作ではなく、速度

ウエイトリフティングやクイックリフトを指導していると、人は分割をしたがるものだと感じます。

一番わかりやすい区切り方は、セカンドプルの直前・直後でしょうか。ここに境界線を入れたがります。

理由はおそらく「動作が変わる」と思っているからです。

しかし、行っている動作自体は変わっていません。そのまま股関節、膝関節、足関節を伸展し続けていけば良いだけであり、伸展という動作そのものに変化は起こりません。

ただし、その境界線付近で関節を伸展させる速度を変える必要はあります。それは速度を変えているだけであって、動作が変わる訳ではないのです。

その「速度が変わる」ポイントで別のことをしようとするから、分割されてしまうのではないか。あくまで推測ですが、そう考えています。

車のギアチェンジに例えると

車で例えてみましょうか(車が分からない方には伝わらないかも知れませんが)。

今はAT車が多いので伝わりにくい話ですが、MT車に乗ったことがある人なら分かるかも知れません。AT車でも同じことは起こっているので、これを機会に車の仕組みを少し勉強してみるのも良いかと思います。

ギアとかシフトという表現をしますが、要はギアですね。これを変えているだけ、というのがセカンドプル直前直後の境界で起こっていることです。

車を走らせながら、速度に合わせてサードギアからトップギアに切り替える。あれと同じようなことでしょうか。

昔の車種にはセカンドからいきなり4速に入れるようなものもありますが、いずれにせよ、速度に合わせたギアチェンジそのものによって「走り方が変わる」ということは起こりません。

いちいち停車してからギアチェンジはしません(公道でそれをやると危ないですし)。ギアチェンジは走りながら行うものです。

ウエイトリフティングで言えば、バーベルを持ち上げるために足を伸展し続けながら、その伸ばす速度を変える。ギアをチェンジする。足の伸展を続けたままギアチェンジをしないと、ウエイトリフティングの動きにはならないということです。

そこがウエイトリフティングにおけるテクニックであり、その部分をトレーニングとして鍛えたいのがクイックリフトなのだと思います。

分割練習が反映されない理由

本質を理解しないまま分割して練習すると、せっかく分割部分を強化できても、それが実際のウエイトリフティングに反映されないということが起こります。

これは私が現役でいろんなところで練習していた頃、よく見ていた光景です。

かなりの高重量でハイプルの練習をしているにも関わらず、実際のスナッチの重量は伸びない。本人はそれで強くなった気持ちになっているかも知れませんが、第三者から見ると何の成長もしていないのが見えていたりする。

なぜかと言えば、ウエイトリフティングではないことをひたすらやっているからです。

ウエイトリフティングを習得したい、上達したい、強くなりたいのであれば、ウエイトリフティングの練習をしなければなりません。

適切ではないところで分割したものは、もうウエイトリフティングではない。ウエイトリフティングではないものを練習しても、それはウエイトリフティングの練習にはならないのです。

極端な言い方をすると、ウエイトリフティングを習得したいのにパワーリフティングの練習をしているようなものです。

パワーリフティングは、パワーリフティングの習得と上達のために行うものです。ウエイトリフティングのために行うものではありません。

なぜ、人は分割したがるのか

では、どうして分割する文化があるのか。

ウエイトリフティングって、難しいんです。

やってみれば分かると思いますが、結構難しい。決して簡単なものではありません。

小分けにしたほうが効果的だから、強くなれるから分けている訳ではありません。難しいから、小分けにしたほうが覚えやすい。だから分けるのです。

分けたいと思うほどに、実は複雑な動きなのかも知れません(そうとも思えないですけどね、実際)。

人間は、加速したり減速したりというコントロールが苦手なのかも知れません。違う動きを、例えば4つの動きを1から順番にこなしていくほうが得意なのかも知れない。

料理の調味料の加減を調整するのは結構難しいものです。それよりも、決められた量を決められたレシピで入れていくほうが、おそらく分かりやすいのでしょう。

専門的な言い方をすれば、「曖昧さ」や「ファジー」といった概念や感覚で動くことが苦手なのかも知れません。

「曖昧さ」をどう身体に取り込むか

境界がはっきりしていない中でコントロールをして物事をこなす。これが曖昧さやファジーという感覚の必要になるところです。

ウエイトリフティングにおけるバーベルの加速は、まさにこの「曖昧さ」をどうやって身体の動作に取り込んでいくか、どう使っていくかなのだと思います。

ウエイトリフティングの動作は、分割されたものではなく連続性で成立しています(クリーン&ジャークは2分割だろうという話はありますが、これも突き詰めると完全な分割ではありません)。

バーベルが加速して力を帯びて上昇していく中に、ギアチェンジはあるが動作の変化はない。

そしてギアチェンジのポイントは必ずしも同じ場所ではないため、境界点を決めることができません。その境界点自体が曖昧でファジーであり、それを考えながらギアを切り替えていかなければならない。これがウエイトリフティングの本質の一つだと思います。

そのギアを切り替えるポイントこそが「タイミング」というものなのではないでしょうか。

曖昧な中でタイミングを捉えてギアを変える。そうすればバーベルは、気持ち良いくらいスムーズに上がります。

指導をしていて、それを理解した人がいました。その感覚やプロセスを言葉にすることはできないようでしたが、「わかる」とは言っていました。

そのタイミングを掴んでバーベルを上手く上げるために、体の使い方を学ぶ。それがフォーム習得のための練習だと思います。

それでも分割するなら

ウエイトリフティングの動きは、分割できるようなものではありません。

連続した動きをまるっと一つとして、スナッチであり、クリーンであり、ジャークであり、クリーン&ジャークなのです。

一度ウエイトリフティングというものが理解できれば、その上で自分自身で分割して行う分には良いと思います。最終的にウエイトリフティングに還元できるのであれば、分割も悪くはありません。

ただ、本質を理解すればするほど、これは分割できないものだと感じるようになるはずです。そしておそらく、その感覚が正しいのだと思います。

連続した、混沌とした、カオス状態の中からタイミングを捉えなければならない。そのタイミングは必ずしも同じ場所にいない。

となれば、連続という現象を常に起こしていなければ練習になりません。それを起こせない分割には意味がない——そう理解していただけたら良いかなと思います。

言葉で説明するのが難しい話なので、こうしてエッセイという形で書き残しています。実際にバーベルを持って動いているとき、ふと思い当たる瞬間があるかも知れません。

2025.4.15 著


関連

→ウエイトリフティングが強くなるには →ウエイトリフティングのフォーム習得のための初期基準 →ウエイトリフティング指導

→ウエイトリフティング:エッセイページへ


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